Long stay research – Miyoshi

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長期滞在視察 – 三好市篇

 まさかこんな短期間に2度も徳島に来ることになるとは…ということで、実は今、徳島県三好市に滞在しています。前回の神山町の長期体験視察から2ヶ月。日帰り視察でお世話になった三好市の職員さんやNPOの方々と水面下で話をしておりました。今回は三好市での長期体験視察をお贈りいたします。

■ 三好市池田町に入る

 羽田から約1時間で降り立ったのは高松空港。神山町の時は阿波おどり空港でしたが、地理的にお隣のうどん県にある高松空港からの方が近いということで、高松空港に降り立ちました。ただ、空港から三好市方面に行くリムジンバスがないため、空港から公共交通機関で三好市に入るにはバスと電車を乗り継がなければいけません。でも今回はなんと、市の職員の方が空港までお出迎えしていただきました。車で一般道だと2時間弱、高速だと1時間ちょっとで行けちゃうそうです。

 三好市の中心地は阿波池田駅。アラフォーでしたら高校野球で有名な池田高校があるところと言ったらわかるでしょうか。駅前から放射状に延びる商店街があり、締ってるお店もありますが、神山町を見た後だからかもしれませんがそこそこ栄えている印象を持ちました。なんでも、人口に占める居酒屋さんの数が全国トップクラスの数あるそうで、確かにこじんまりした呑み屋さんはたくさん見かけます。神山町とは違って、外で集まって呑む習慣が定着しているようですね。

 さて、今回の長期体験視察には、三好市の職員やNPOのみなさんにご尽力いただいちゃいました。というのも、前回の日帰り視察(「Satellite office research TOKUSHIMA」)の時にも書きましたが、神山町のように移住やサテライトオフィスを検討している人向けの体験宿泊施設やその他の設備が整ってないので、僕の申し出自体がちょっとしたハードルになっていました。同じ徳島県の美波町はそれを理由に拒否されましたが、三好市の職員さんは頑張っていただきました。僕が提示した視察のための条件というのは以下の通りです。

  1. 長期で宿泊できる宿泊施設 - 神山町では1万円/週
  2. 宿泊施設でのネット通信環境
  3. 滞在中に作業できるスペース - 神山町ではコワーキングスペース
  4. 移動手段 - 神山町では自転車と原付

 市の職員の方は、アパートの空き室などをいろいろと当たっていただきましたが、賃料や家電や布団などを持ち込むことが難しかったり、安く借りられなかったりと上手くいかずに2ヶ月経ってしまいましたが、最終的にはすべてクリアしていただきました。特別対応だったので、みなさんが視察に行く場合に適用されるかはわかりません。

 今回の宿泊施設は、夏場はラフティングなどで大盛況なのですが、オフシーズンは空いているという宿を同条件で対応いただきました。ネット環境も地元CATVさんのご協力で使えるようにしていただきました。作業スペースは、サテライトオフィス誘致の委託をしているNPOが事務所として使っているスペースが、コミュニティスペースになっているので、土日以外はそこに通う形になりました。そして移動手段は、宿から作業する場所まで車で30分くらい離れているんですけど、市の職員のお知り合いから車を無料でお借りして、滞在中の1ヶ月だけ保険に入りいたしました。

 ご協力いただいたみなさま、ホントにありがとうございました。ということで、今回の長期体験視察に至ったわけです。また1ヶ月、三好市でコミュニケーションを取りながらサテライトオフィスの可能性を探ります。

■ コミュニティの様子

 初日は池田町のビジネスホテルをとっていました。市の職員の方が今回、アテンドしてくれるんですが、歓迎会を開いてくれました。神山町滞在中に知り合った、地域おこし協力隊の女性も来てくれました。神山町でもそうですが、暗くなったら仕事を切り上げて、19時くらいにポツポツというかダラダラというか、声を掛けられてる人が徐々に集まってきて22時くらいに解散っていう全体的に緩い感じ。山の方へ行くとまた違うかもしれませんね。

 三好市には「地酒で乾杯条例」ってウソみたいな条例が制定されたとかで、それに則って、普段あまり日本酒は呑まないのですが、朱に交わってみました。

 次の日にはまた別のグループで歓迎会をしていただいて、初めて帰りに運転代行を使いました。東京じゃあまりないことですよねぇ。ココでもやっぱり、何でまた東京から?って言う話と、やっぱり外から来る人への期待感と歓迎ムードに包まれました。

 神山町と同様、お客さんのうちは気を遣って呼んでもらえるでしょうけど、移住した場合、やはり付き合いが無いと誰かに呼ばれることもなければ、集まる機会も殆どないと思っていいでしょう。ただ、神山町と大きく違うのは、コンビニも大き目なショッピングセンターなど、お店が割とあるので、池田町という街中で住むとなれば、東京でSOHOみたいに事務所兼独り暮らししてるので大して変わらないかもしれません。

 どちらにしても、自分から積極的に関わっていくという姿勢でないと、孤立して詰まらないものになってしまいます。今回、作業スペースとしてお邪魔するNPOはコミュニケーションの場になっていて、移住組や若いクリエイターや地域おこし協力隊などのメンバーも出入りしているので、ここがコミュニティの発信拠点になるでしょう。

■ 気候

 三好市は池田町を除くとほぼ中山間地域で、吉野川に沿って道や街が整備されています。四国のどこにでも出られるほど道路や高速は整備されています。今回は冬の時期に滞在していますが、前回、日帰り視察に来た時は9月下旬で、街は日差しが強く遮るものもないので、それなりに暑いですが、東京に比べるとカラッとしていますし、近くには山があり、吉野川や池田ダムがあるので、東京の照り返しの様な不快な暑さはなく、さわやかな風が通ります。

 冬は雪も降るし、山の方ではチェーンや雪用タイヤが必要で、特に県境の奥の方では4WD車でないとちょっと厳しいと聞きました。まぁ、山ですし、人里離れてますから当然と言えば当然でしょうか。
 実際、チェーンを付けるほどではなかったですが、滞在中に何度か雪は降りました。耐えられないほどの寒さではありませんでしたが、東京で過ごすよりはやっぱり寒いですね。ただ、車での移動なので、意外と外気にさらされずに作業スペースまで行けちゃうので、行き帰りはそれほど苦痛じゃありません。

 作業スペースが古民家で土間のせいか、隙間風や底冷えがします。しかも広いスペースなのでエアコンは効果がなく、大きな灯油ストーブが2台置いてあります。マンションとか狭い空間ならともかく、昔ながらの広い造りの戸建では、ストーブと炬燵が定番みたいで、灯油代がバカになりませんね。
 山の方では達磨ストーブでしたが、部屋中が煙くて日常的に遣うのはちょっと無理かな?って思いましたし、薪を買うとなると灯油より高いとか。貴重な体験ができました。

 僕は冬が厳しかろうと夏が暑かろうと、古民家を切望しているので、暑さ寒さ対策は考えとく必要がありますね。

■ 行動範囲

 今回は自動車を用意していただきましたので、どこにでも行けたんですけど、車で独りでドライブする習慣がないので、目的もなく1時間流すと飽きてしまって戻ってきました。結局、宿から30分くらいの温泉に行くのが関の山でした(笑)

 地元のみんなに聞くと、みかん県の四国中央市やうどん県の高松市、かつを県の高知にも出掛けるそうです。あまり、徳島方面には出ないとか。いずれも2時間前後で行けちゃうって言うけど、感覚の違いでしょうか、車で2時間って遠いって感じちゃいます。

 日常生活は、池田町の街中で有れば、徒歩圏内でほとんどのものが揃います。街から離れた地域では、電車や路線バスが一応ありますが、本数が少ないために行動しにくいところはありますので、住む地域によって車が無くても過ごせるところと、ないと過ごせないところがありそうです。 

 街中で集まって呑んだりする機会も多いので、ノンアルを呑むか、普通に呑んで運転代行を使うかって感じです。ちなみに片道30分程度の距離で運転代行を使うと2,000円位です。呑み代は安いですが、運転代行まで考えると、都内で呑み会やるのとあまり変わらない出費になりますね。

■ 仕事環境

 神山町と同様ですが、徳島県は県全体、山の上まで光が敷かれてるので、100Mの光がすぐに引きこめます。街では地元CATVかNTTが選択できるという話でした。山間部は制約があるかもしれません。

 宿は街から離れた集落にありますが、こちらも問題なく快適にアクセスできました。山間地域や集落で、どのくらいネットが使われているかはわかりませんが、街から離れても通信環境は問題ないことが確認できました。ただ、四国は台風の通り道なので、自然災害があった場合、特に中山間地域での脆弱性はあると思うので、例えば台風や雪害、土砂災害などで物理的に断線するなどした場合、復旧までどのくらいの時間を要するのか、対応はどうなのかなぁと言う点は、ちょっと気にはなります。

 モバイルの通信環境も、街はもちろん、山の上でも全く問題在りません。FreeのWifiは飛んでませんし、コワーキングスペースもないですし、ファストフード店もないので、そういう意味ではノマドが出来る環境ではないと言えます。
 
 ちなみに宅急便やASKUL、Amazonなどは問題なく普通に届きます。

■ 移住やサテライトオフィスについて

 三好市では5つほど物件を見せていただきました。大小、新旧、池田町の街中や山の上にある賃貸物件を見せていただきました。結果から言うと、希望する古民家物件と間取りや広さが合うものがありませんでしたが、元理髪店などの面白い物件を見せていただきました。

 神山町と決定的に違うのは、賃貸物件の家賃相場です。神山町の場合は、修復が必要な古民家が1~3万円/月が相場なのですが、三好市の場合は5万円以上が相場ですので、徳島市内、徳島駅前周辺と賃貸相場がそんなに変わらないということでした。ということは、池田町の街中で借りようと思うと、それなりにコストが掛かるということになります。また、街中物件は、間取りが小さいか部屋数が少ないものも多く、希望する物件を見つけるのは難しいでしょう。

 だとすると、池田町から離れた山間部を狙うということになりますが、今回は大きな家でも全体の一部だけを貸すとか、借りるにあたって制約があるものでしたので、家賃や条件の話までにはなりませんでしたが、コスト面から言えば対象になるのはコチラかもしれません。

 また、池田町のうだつの町並みの通りに、昔旅館だった建物がサテライトオフィスとして使われています。天皇も宿泊したことがあるという由緒正しき旅館で、取り壊し予定だった旅館を、住民の反対によって阻止し、現在はリフォームして部屋ごとにサテライトオフィスとして賃貸しています。
 オフィス専用スペースとしても、和洋折衷の趣も申し分ないのですが、僕が探しているのは居住スペースと作業スペースが同一敷地内にあることが条件なので、ここを借りる上に、住居をまた別に借りることになると、コスト面でデメリットになります。そうでなくても、東京を離れた場合、減収になる確率は高くなるので、ランニングコストは重要です。しかも、このコストは安くなることはありません。ということで、選択肢からは外れます。

 そして、以前、日帰り視察の時にも少しお話ししましたが、子どもの数が大幅に減少しているため、三好市では旧廃校が20校もあり、有効活用の企画を募集しています。通れば期限付きで無償で借りられるとか。しかし、弊社1社では有効活用には限界があり、僕の住居という問題は依然残ります。

 今回の滞在期間中には、希望する物件が見つかりませんでしたが、引き続き探していただけるよう、お願いをしてきました。

■ NPOの取り組み

 最後にNPOの取り組みですが、移住やサテライトオフィスの誘致は推進力という部分では、まだ始めたばかりということもあって、あまり進んでるという感じはありません。空き家調査を池田周辺で始めたところということで、今後に期待と言うところでしょうか。
 移住やサテライトオフィス誘致よりも、地域の活性化のためのイベントやコミュニティづくり、古き良き街並みの保存などを、地元住民を巻き込んで積極的に取り組んでいます。
 
 例えば、うだつの町並みで年に数回、クリエイターや作家などの出展者を募り、パフォーマーやゆるキャラ、チンドン屋も登場する「うだつマルシェ」や地元の造り酒屋が集まっての呑み放題イベント「酒まつり」などを企画、運営し、四国内外から多くの人を呼んで、街を活性化させています。こういった取り組みに、多くの若者がボランティアとして参加し、さらに多くの人が集まって、ここまで大きなイベントにしたようです。

 三好市は規模が大きいので、いろんな活動がしやすい地盤創りを若い人が中心となって推進しているのはステキですね。自治体も、地元の人も協力して、いろんな取り組みが出来ているのが素晴らしい。こういう活動は見習いたいですね。

■ まとめ

 今回は、実際に物件を見せてもらいました。一方で明らかに空き家にも関わらず貸せない事情も見えてきました。例えばこんな理由です。

  • 持ち主に辿りつけない
  • 持ち主が遠方に住んでいて連絡がつかない
  • 相続が明確ではない
  • 年に何回か子どもが帰ってくるので残しておきたい
  • 仏壇があるから

 などの理由で、なかなか空き家を賃貸するというところまで辿りつけないそうです。

 恐らく、これは三好市に限ったことではなく、全国で空き家がなかなか利活用されないのは、そういう共通した問題からだろうと思います。制度的にもう一歩突っ込んだ政策、たとえば既に一部の自治体が実施していますが、自治体が譲渡や寄付、買取を行って、リフォーム後に移住者に賃貸するというような、積極的な対策が必要なのではないかと思うわけです。

 神山町から引き続き、クリアしなければいけない問題解決に向けて活動しつつ、物件をどのように探すか?を検討していかないと、これ以上、先に進まないなぁと感じました。どこの自治体の移住情報もなかなかアップデートされないし、検討するに十分の情報が公開されていないケースが殆どなので、なかなか東京から行動を起こすのは難しい状況ですが、東京で開催される移住者向けイベントに出掛けてみるとか、これまでに知り合った方からの情報を頂きながら、何度か現地入りする必要があるだろうと思います。

 このブログを読んでいる方で、同じ思いで迷ってる方は、まずは、いろいろ考えずに視察に行ってみてはどうでしょう?得るものがたくさんあると思うし、課題も見つかりますし、リフレッシュもできますよ。

 ということで、三好市での体験視察のステップは具体的な検討に入るところまでは進めなかったので、ここまでとなりました。

  1. 移住する地域を決める
  2. 自治体から情報収集する
  3. 移住地域やその周辺のクリエイターとSNSで繋がる
  4. 視察や体験移住する
  5. 知り得た情報の精査、検討
  6. 資金準備、移住時期の決定 - 検討に至らず
  7. 改修や引越スケジュール - 検討に至らず
  8. クライアントやお仕事関係の調整 - 検討に至らず

 さて、次回は、今のところ予定がないので、また進展したらお知らせいたします。神山町や三好市に限らず情報をお持ちの方はお知らせください。それではまた。

「長期滞在視察 – 三好市篇」というお話でした。

作成者: 木村 ロキ

女性制作ギルド 秘密結社 Qrious(キュリアス) ファウンダー兼プロデューサー 東京から瀬戸内の島に鵜住したことをきっかけに、クリエイターの働き方や人財育成、再生、地域でのクリエイティブやICTを活用したブランディングや地域創生、事業再生を得意としたプロデュースやディレクションで活躍中。メガネ&広島弁や伊予弁など方言女子が大好物。個人的には懐古的なモノがスキ。ネガティブ属性だがユーモアを忘れない。1970年 江戸下町産。

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